くるもみ探偵団「ひめかカサブランカ」
※なんでも許せる方向け
※オリキャラ注意
※微ホラー注意
※誤字脱字・二人称のミス有りの可能性
見つけた人ごめんなさい&ありがとう
※200話までの内容を含めます
原作未読の方はジャンプ+へ
ある春の日のこと。お花の蜜大学附属高等学校の屋上は今日も様々な少女たちで賑わっていた。
相撲を取る者、編み物をする者、昼寝をする者など各々が自由に、そして慈しむようにその時間を過ごしていた。
「あれ?姫歌は?」
原賀胡桃は尋ねた。
「新曲のレコーディングのため、今日は来てないみたいです」
茂見紅葉は答えた。
「そっか・・・そろそろ返ってくるころだと思ってたけど」
「ペダリスト、アニメ化するらしいですよ」
そう言ったのは花園家に仕えるメイドの一人、女井戸妹だった。
「え!そうなんですか?最近ハマったので嬉しいです・・・!」
そう話すのは華暮愛々だった。二人は歳も近いこともあり、よくアニメや漫画の話をする仲でもある。
「ね!ラッキーですね」
「何?私知ってる漫画かしら」
「姫歌さん。ペダリストって漫画知ってますか?自転車競技をする女の子の話なんですけど」
「残念ながら最近サーチ不足で…。アニメになるってことは、やっぱり面白いの?」
スイッチが入ったように妹の目が鋭く光った。
「面白ぉいですよ!!基本的に主人公の女の子とそのコーチの男の二人を軸としたバディものなんですけど、その絆がアツくて最ッ高なんです!」
早口に妹は語り続ける。
「それに立ちふさがる数々の強敵(ライバル)も魅力的で!!そっちのキャラ人気で読み始める人も多いですよ!クセの強いキャラクターばかりで奇人変人のオンパレードって感じです!」
「奇人…!」
愛々は(妹さんの布教は言葉選びが上手いな…)と感心した。
「あ…そういえばアニメ化でOPが米津け…」
「米津!?!?!?!?!?!?!?!?」
愛々の言葉に姫歌は間髪入れず食らいつく。
「米津が関わっているならば是非一度拝見したいわ!その漫画ってどこで読めるかしら!?」
「ええと…わたしは漫画アプリで…」
「あー…少し前までアプリの方で全話無料公開だったんですよね。それを愛々さんにオススメしたので。」
「あら…惜しいことしたわね。でもアニメ化するならセールで安く読めるかしら…」
「あ…あのー」
「?」「?」「?」
何か言いたげに、話に入りにくそうにヌッと手を挙げたのは中等部の原賀胡桃であった。
「アタシのお母さんがめちゃめちゃファンで…家に全巻揃ってんだけどよかったら…」
「え…!いいの…!?寧ろこちらからお願いしたいのだけど!!」
「い、いや…!なんか勝手に先輩方の話に入っちゃってつーか…」
「何言ってるの!ファミリー(わたしたち)にそんな遠慮は不要よ!何時でも入ってきてほしいわ!…この四人の中じゃ私が一番新参者なんだけどね。」
姫歌は可笑しいわね、と言いたげに笑った。
「そうですよ。もう私たちに遠慮なんかしないで下さいね。」
「胡桃さんも何かオススメの漫画とかありますか!?良ければお姉さまにも紹介しようと思いますので!!」
「えと…」
それから四人の漫画談議はもう少し続いたという。
数日後。才奇姫歌は新曲のレコーディングを終えて自宅に帰る途中であった。
その顔には若干の疲労がたまっており、足どりも少し重いものであった。
(ペダリスト、面白過ぎて夜ふかししてまで読み切ってしまったわ…)
(ダメね。こんなんじゃ…)
(漫画読んで寝不足なんて…プロとして自己管理がなってないし、なにより…)
(普通よ、普通…!寧ろ10時間熟睡しても寝不足ぐらいにならないと奇人にはなれないわ…!)
戒める点が若干ズレているような気もする。
(明日には胡桃に返さなくちゃ)
などと考えていた姫歌に、謎の声が聞こえる。
「チョット、そこのお嬢ォさん」
そこには老婆がいた。和菓子屋と古着屋の間の通り、路地裏へと続く細道の真ん中に机と椅子を構え、これ見よがしに水晶を机の上に置いている老婆がそこにいた。
「ちょいと運勢、占っていかないかい。」
「…ごめんなさい。そんないかにも『わたし占い師やってますゥー、占っていきませんかあ』みたいな格好の人に占って欲しいとは思えないの。じゃあね。」
「オイオイお待ちよォ。アンタ『奇人』になりてぇんじゃないのかい?」
姫歌の足が止まる。
「…どうしてそのことを?」
「キキキキキキ…アタシにかかればそれぐらいのことわかるさね。『いかにもな占い師』には、アンタから溢れるオーラが直ぐに察知できたよ。そして、アンタにこれから訪れる幸運も…」
チャンスだ!と姫歌は思った。このワンピースの世界の人みたいな笑い方の占い師に自身の運勢を占ってもらう機会など、人生でそうないだろう。
それにこの老婆は姫歌の欲望を的確に当てた。
(この占い師…相当の奇人ね!)
「いいわ。占わせてあげる。でも私普通の占いなんて期待してないわよ?」
「キキキキキキ・・・やっぱりアンタは大物になるよォ〜アタシの第六感にビンビンきてるさね!」
「イヤァ・・・?違うねッ
アンタは大物に『なる』んじゃあない。すでに『なってる』んじゃないのォ」
老婆の目が鋭く光る。
「・・・!」
「キキキキキキ ・・・!いいさね。何も言わなくてもアタシにはわかるわかる。アンタにはこれからも『幸せの絶頂』が訪れるよ・・・!しばらくの間ずうッとねッッ‼︎」
「ふーん・・・随分と持ち上げてくれるじゃない。そんなこと言われるとさすがに期待しちゃうってものよ?」
「誰にでもこんな事言わネェさァ。どうやらアンタは『人生を変える出会い』をしたね?そういう人が宿すオーラってのがプンプンしてる。
これからアンタはやることなすこと全てが上手くいく人生を送れるよ。たとえ挫折しても、その『出会い』がアンタを助けてくれる…幸せもんだネェ」
すごい・・・ 『人生を変える出会い』って思い当たる節しかない・・・
姫歌はこの占い師が「奇人かどうか」はさておき
「本物」であることを確信した。
「でもアンタみたいな若い奇人はそんなんじゃ満足しないだろう?」
「・・・!?」
それは密かに期待していた言葉でもあった。自分を奇人として見てくれる上に、
更なる数奇な運命の啓示まで…
こういうドラマチックで奇妙な体験に姫歌は鳥肌が立ちっぱなしだった。
「そこで、だ…このブレスレットをあげようねぇ。
『白いカサブランカ』を模したブレスレット。
花言葉は『高貴』と『祝福』ッ!
これを付けると『アンタの幸せがアンタの大切な他者に降りかかる』ッ!」
「なんですって、他者に…!?」
「アンタの幸せの『絶頂』を文字通りおすそ分けしてやるってことさ。なぁに、
それでアンタの運勢が悪くなるなんてことはァ無い。アンタとアンタのお友達が幸せになるって寸法さァ…ういんういん?ていうのかい?最近の言葉では」
それが本当なら願ってもいない話だ。私だけではなくファミリーのみんなも幸せになれるのではればそれが一番である。しかし…
「WIN-WINね。でも残念。あいにく私はオーラは凄くてもお財布は凄くない貧乏学生(噓)なのよ。そういった物は簡単に購入できないわ。」
「ああ、ならタダでいいよ」
「なんですって?」
「アンタこそ…このブレスレットに相応しいッ!付けておくれよ『白いカサブランカ』
アンタのようなオーラの持ち主を手ぶらで帰らせるのは占い師としての『誇り』に砂をかける行いさッ!『後悔』がッ!一生アタシに付きまとうッ!魚の小骨が喉に突き刺さったみたいに気になってしまう確信があるんだよォ~~」
「『あの時渡しておけばもっと幸せになれたのにィ~』って…」
気圧される…
姫歌はなぜこんなにもこの奇人占い師は切羽詰まった顔で謎のブレスレットを押しつけてくるのだろうと若干恐怖にも似た感情を抱いた。
冷や汗が姫歌の肌を伝う。
「わかったわ…ただしお金を『払う』のではなく、『置いていく』わ…
何故ならッ私は『奇人』だから‼」
ドヤァァァァァァ
「え…いやホントに要らないけど…無理しなくていいけど…」
「いいえッ!『タダより怖いものはない』と言うわ!アナタもプロとしてお金は受け取るべきよッ!だから1000円ーー
いえ、これじゃ普通ね。お財布の中の小銭全部置いていくわ!!897円!!
あら結構入ってたじゃない!これでお互いスッキリね!!」
「いや小銭入れを掃除しただけじゃろ」
いつの間にか気圧されていたのは老婆だった。
ブレスレットの効果は翌日、すぐに訪れた。
「うわあああああああああああっ!!!」
「どうしたんだ胡桃ーーーッ!!」
「ど、どうしたの…!?返したペダリスト汚してちゃってた…!?」
「恋太郎先輩、姫歌先輩…」
「『金のエンゼル』だよォーーッ!初めて当たったッ!銀色なら何度も引いたことあったけど…遂に…待ち望んだ金色が来てくれたんだロロロロロロロもごもごもごムシャ」
「ああっ胡桃喜ぶか食べるかどっちかにするんだー!」
「胡桃ちゃん♥言ってくれたらママが出るまで100個でも1000個でも買ってあげるのにーーーッ!♥♥♥」
「やめてください」
チョコのボール状のお菓子の当たりが出て大喜びの胡桃。
その光景を喜ぶ理事長と諌める娘。
(まさかこれがブレスレットの効果…!?)
そしてそこからファミリー達の「幸運」は連鎖的に発生した。
「自販機でもう一本もらっちゃったしぃー」
「7777!あー子が出したんだぞ」
「クジ引きで一等賞当たったんでぃ!」
「風が祭李に幸運を運んできたとも言えるし そうでないとも言えるね」
「町内会のビンゴ大会で扇風機当たったのだ!」
「瓶…碁…?」
「ギャーーーー何の気なしに買ったおもちゃ会社の株価が一気に爆上がりでインカムゲインがエグい額にーッ!!!」
「流石羽々里様の審美眼様でございます」
(凄い…本当にみんなが幸せになってる…!)
姫歌はこの『白いカサブランカ』のブレスレットの効力を本物だと確信し、少し誇らしい気分になった。
(やっぱり…自分だけじゃなくみんなで幸せになるのが一番だわ。だって…)
「恋太郎ー!扇風機の風、浴びるのだ」
「あ”あ”あ”あ”あ”あ”良”か”っ”た”で”す”ね”楠”莉”先”輩”」
「風が恋太郎に喜びを運んできたと言えるね」
「流石詩人様のポエム様でございます」
(あんな風に…彼が笑ってくれるから)
屋上は今日も賑やかだった。
それから数日が経ち、
珍しく空は雨模様が続き、何日もファミリーは屋上で集合できないでいた。
「あら」
「あ」
「おや」
階段の踊り場で鉢合わせたのは姫歌とくるもみであった。
「お二人も屋上に?」
「いやー雨降ってるってわかってても誰か来てるか確認しに来ちゃうんだよね…」
「奇姫さんも同じですか?」
「…?ええそうね。そんなとこ。」
「あ、さっき羽々里も同じように嘆いてたからさ。なんか花園邸に集まろうって話を聞いたんだ。奇姫も来るんだろ?」
「え、ええ。そういうことなら行こうかしら」
キーンコーンカーンコーン
「おや、5時間目が始まりますね…紅葉たち次家庭科室ですよ」
「やべ、急ぐか。じゃあね奇姫また後で!」
「ええ!また!…また」
急ぎ歩いて去る二人。残された姫歌は少し違和感を感じていた。
「なんで急に『奇姫』呼び…二人も奇人になる努力をするようになったのかしら」
ちょっと普段とは違うことをしようと思ったのかな、とその時は思った。
しかしひめかはその後にも同じような目に合うのである。
「あら~奇姫ちゃんいらっしゃい♥待ってたわ♥♥♥」
「「おかえりなさいませ、奇姫様」」
「お、お邪魔します…?」
「おー奇姫!待ってたのだー」
「奇姫!あれ歌ってくれよあー子が好きなやつ」
「えー数っちぃ、奇姫っちまだ来たばっかりじゃーーん」
「え…あ…え?なに?みんな。どうしたの?ドッキリか何か?」
違和感。
みんながひめかの事を「奇姫」と呼ぶ奇妙な空間。
もちろん「奇姫」は芸名だし、言われて気分が悪くなるわけもないが、こうも全員から「奇姫」と呼ばれると他人行儀に感じてしまう。
「…?何かって何がですか?奇姫さん」羽香里が尋ねる。
「どうせまた奇姫が奇人ぶってるだけじゃないの」唐音が呆れる。
「いやいや、その呼び方よ…なんで急にみんなで芸名で呼んでくるのよ。別にいいけど。」
「『芸名ってのは』『いったいどういうことなんだ?』『奇姫さん』」
「奇姫とは貴女の名前。それ以外の意味はない。」
「も、もういいわよドッキリは。私はすぐにドッキリにかけられることに気づいちゃう奇人だってわかったでしょ?」
ドヤァ…
しかし周りの彼女達は頭に「?」を浮かばせたままひめかを見ていた。
「…どうしたんだ奇姫、変だぞ?…いつも変だけど」
「揉みましょうか?」くるもみが心配する。
「だから…私の名前はさい…」
さい…
さい…?思い出せない。
は自分の名前を思い出せなかった。
続きはWebオンリーイベント Webオンリーイベント「大大大大大好きです!!」3にてpixivで投稿予定です。
アカウントを作りましたので是非ともご覧下さい!
※この作品はフィクションです
くるもみ探偵団 『くるみハンド』
※なんでも許せる方向け
※オリキャラ注意
※微ホラー注意
※誤字脱字・二人称のミス有りの可能性
見つけた人ごめんなさい&ありがとう
※190話までの内容を含めます
原作未読の方はジャンプ+へ
ある春の日のこと。お花の蜜大学附属高等学校の屋上は今日も様々な少女たちで賑わっていた。
談笑に花を咲かせる者や、菓子を振る舞う者、或いは数字になりきる者など多岐にわたり、各々が自由に、そして慈しむようにその時間を過ごしていた。
「呪いの裏路地?」
そう素っ頓狂な声を上げたのは彼女らの中心人物、彼女たちを愛し愛する彼氏。
愛城恋太郎その人である。
「そんな噂が流行ってるの?」
「ええ。何でもそこに入った人は行方が分からなくなってしまうそうで・・・」
「べっ、別にそんな話聞いても怖くなんてないんだからね!」
「「呪われし」『禁足地…⁉︎』」
「呪いなんて非現実的」
「でも最近になって急に噂が拡がりましたよね…」
そう話すのは上から花園羽香里、院田唐音、好本静、栄逢凪乃、華暮愛々、
1年4組の面々であった。
「そう…その路地に入ると白くてボヤーっとした手が両壁から何本も生えてきて…
そしてその腕に絡め取られあらぬところをまさぐられあんなことやこんなことに…♥」
「おめーの妄想ダダ漏れじゃねーか!!」
「『恐ろしき』『触手の道』「もしかしてやばいんじゃね~のかぁ~?」」
「関係ない。好本静は私と愛城恋太郎が守る」
「でもその噂の一番怖いところって、場所がどこかわからないことですよね…」
華暮愛々は静かに呟いた。
「ふん!あんた本気でそんな噂信じるわけ?」
「い、いやでも…ラピュタはありましたし※、『100カノ』ですし…普通にあり得ることなんじゃ…」
それはそうなんだよなぁ…と一同は決して口にしなかったが
各々が同じ不安を抱いていた。
※正しくはラピュタではない
「まぁ、唐音さんならそんな幽霊につかまっても凹凸のない身体だから抜け出せそうで安心ですね」
「そうだなぁあたしは心配だよアンタの重いカラダじゃきっと逃げ切れやしないだろうからな!!!」
「何言ってるんですか?私の体重の98%は恋太郎くんへの愛と1%のむふふで構成されているのでホントは羽みたいに軽いんですよ」
「何言ってるのかわかんねーのはオメーだよこのむふふ100%め!!!」
今日もまた二人は仲良く喧嘩を始める。
そんなやりとりを遠くから聞いていたのは
この作品の主人公コンビであるくるもみ達であった。
「100%か…ジュース飲みたくなってきたな…」
胡桃はそう呟くとひとり購買へ向かった。
「100?100がどこにあるの?」
そう言い現れたのは数字を愛する少女、数。
「多分購買にありますよ。一緒に行きます?」
「うん!」
紅葉と数もまた後を追うように購買へ向かった。
「胡桃さん」
ずるずるずる。
昼休みの教室、手元のいちごミルクを空になってもいじらしく啜り続ける紅葉の前には胡桃が座っていた。
「なんだよ…」
胡桃もまた購買で買ってきたであろう100%オレンジジュースを飲み干し、これから起きるであろう事態に不満を表すかのようにストローの先をガジガジと噛んでいた。
「例の幽霊路地の話なんですが」
「ああ…言っておくけど詮索はナシな?また探偵ごっこしようなんておふざけでも言うんじゃねーぞ」
胡桃は前回の自分の行動に反省している。
運良く対処できたから良かったものの、もしあんな危害を加える存在と次対的した場合、どうなるかは本当にわからない。
そうなる前にこのマイペース野郎を止めなくては。胡桃は心の中で決心していた。しかしそんな友人の想いはこれっぽっちも本人には伝わっていないようで、紅葉は
「揉みたいのです…腕だけの幽霊なんていったいどんな揉み心地か想像がつきません…‼︎」
恍惚とした表情でそう言った。
「反省しろ!!!!!」
あたしは放課後の校門の前で紅葉を待っていた。今日はみんな予定があったりなかったりして集まりが悪いらしく、屋上には行かないことにした。
…うんアタシも真っ直ぐ帰ればいいと思ってるよ。人並みに勉強はしなくちゃいけないし、地理のワーク提出明日だし、まだやってないしさ。
でもさ、アイツが
「放課後、幽霊路地を探しに行きますよ」
なんて言うわけよ。鼻息荒くして。
危なっかしいんだよなぁ…見ててアイツはさ。
この前だってそうだよ。あたしが駆け付けられたのと夢留先輩の話があったからなんとかなったようなものだし。
とにかくやばいことになる前にアイツを満足させて帰らせなくちゃ…!
「おまたせしました~~胡桃さんこれお詫びに恋太郎さんからもらったブラックサンd」
ばくし ぱくー!! もぐもぐバリバリボリボリ
「おいひ…」
「んじゃあ、行きますか」
クソ…なんか知らん間に餌付けされてしまった…
まぁいい…ほんとにヤバくなったら今度こそコイツを抱えてでも逃げればいいし。
「アテはあんのかよ?幽霊路地って言うもんだから路地裏なんてこの街にいくらでもあるんだぞ」
「今回は当事者が消えてますかねぇ。片っ端から怪しい路地を探しに行きますよ!」
なんでコイツはこんなにも目を輝かせてんだ?
未知なる揉み心地を求めて探究する美揉み家なのか?
この世の全ての肉体に感謝を込めて揉むタイプの美揉み家なのか?
あたしはどーでもいい思考を巡らせる。我ながらコイツの奇行についてやってんのを褒めてやりたいくらいだ。あたしの優しさに感謝しろよ。
「次はあそこのおにぎり100セールの旗が立ってるコンビニの隣の路地に行きますよ」
くるくるくるくるくるくる…!
「…寄っていきますか」
やさしい!
あれから1時間ほど経ったか。夕日もそろそろ沈み始めあたりも暗くなってきた。
あたしたちは街中の路地を見て回ったが成果の「せ」の字も得られず途方に暮れていた。
この辺りで潮時かな…しお…塩ラーメン…!?
「お、おいもう何か食って帰ろうぜ。ら、ラーメンとか…」
「そうですね。もう夜にさしかかってきてますし、今日のところはひとまず引き上げましょうか?」
やったーやっとおわったーラーメン屋さん行こう!
「…~♪~~~♪ ~~~♪~~♪」
「「!!??」」
な…なにか聞こえたような…歌声のような…
いや、まさかな。
「行きましょう!」
脱兎の如く歌声のする方へ向かう紅葉。あたしもそれを追う。
「待てーーーーーーッッ!!」
くそっ、意外にもコイツ足が速い!対抗リレーの時以上の速さなんじゃねーか!?
にしてもおかしい…!幽霊路地の噂に不気味な歌声なんて無かったはずだ…!
もしかしてこうして惹きつけられた奴をさらっていくんじゃねーのか!?
「止まれーーーーッッ紅葉ーーッッ!!」
「心の内に~響くあなたの~声にはエコーが~かかってる~♪
あらゆる視界を~独占して♪狂わせて♪エゴイスティックを、照らして~♪
暗闇からおさらばよ~♪」
「なにやってるんですか姫歌さん」
「あら紅葉こんなところでこんにちは。胡桃もね。」
姫歌かい!!!!!
「何やっているだァーーッッこんな場所こんな時間で!」
「あらやだ、新曲を考えてたらこんな時間に。帰らないとね。あなたたちも帰りましょう?」
「なのです」
「いや帰るけどこっちの質問にも答えろ!!なんでここで新曲作ってたんだ!!」
「だって…空き家の石塀に挟まれて声がよく反響するんですもの。」
「迷惑になることを考えてちゃんと空き家であることを確認した上での奇行だというのか…」
「奇行!?いま、奇行って言った!?」
「ああー」やらかした。
「そうよ私は!!こんなところで奇行をするような奇人なの!!」
ドヤァァァァァァァァァァ…
「こんなヤツに少しでも焦った自分が馬鹿らしいよ」
「大体把握したんで胡桃さんさっさと帰りませんか?」
「なんであたしが遅らせてるみたいな言い方するんだ!!おめーのせいだろが!!!」
「育さんがいなくなっちゃったんだど」
翌日の放課後、屋上でそう言ったのは園芸部の心優しい先輩、山女先輩だった。
「え…!?」
「昨日の教室で見たのが最後だど…それから野球部で練習したあと、家に帰っていないらしいんだど」
山女先輩の瞳にはうっすらと雫が浮かんでいた。
「帰り道に何かあったかもしれないってことですか!?」
「『こ、怖い…』」
「怖がらないで好本静…いま愛城恋太郎が捜索に向かっている。」
「恋太郎くんを信じて待ちましょう…!」
先輩方がザワついている…
マジに人が消えちまったってのか?
それとも…
「あたしたちも育先輩を探そう」
そう言ったのは胡桃さんの方からでした。
胡桃さんは紅葉に神妙な眼差しを向けてそう言いました。
「奇遇ですね。紅葉も同じことを考えていましたよ」
「育さんと最後に会って話していたのは恋太郎さんだったみたいです。野球部の練習に付き合ったあと、一緒に帰ったみたいですね。そして…」
「ここを境に別れたってことか」
紅葉たちは恋太郎さんが最後に育さんを見た場所に来ました。
そこにはコンビニが近くにある十字路で、人通りもそこそこあるごく普通の道そのものでした。
「ここから近くの裏路地だって相当な数ありますが、だいぶ絞られますね。」
「おい紅葉、わかっちゃいると思うが…」
「はい。今は育さんを探しています。噂の幽霊路地ではなく。」
「ああ。ならいい。じゃあ始めるぞ」
そう言うと胡桃さんはしゃがみこんで、
「く、胡桃さん?一体何を?」
ゆっくりとコンクリートに顔を近づけました。
「恋太郎先輩の話によると二人は帰りに小腹が空いたからサラダチキンを食べて帰ったらしいぞ。
意外だよな、買い食いするイメージないもんだからさ。」
「そ、それといま貴女がしていることとなんの関係が?」
「育先輩のサラダチキンは柚子コショウ味だったらしい…」
スゥゥゥーーーーーーーーー……
胡桃さんは地面に手を付け、目を瞑りゆっくりと息を吸い始めました。
「…ホットコーヒー、最後にここを通ったのは
ホットコーヒーをテイクアウトした奴だな…」
「ま、まさか」
紅葉は驚愕しました。地面に残る香りを胡桃さんは分析し始めたのです。それだけではありません。
「ホットコーヒーの前は…フライドチキンを買った奴がここを歩いてる…」
「え」
なんと、胡桃さんはそれよりも前の残り香すらも感じ取っているのです。
「その前はカフェオレ、その前は肉まんとピザまん、アメリカンドッグ、グリーンスムージー、チーズブリトー、ホットコーヒー、コロッケ…」
なんと言うことでしょう、胡桃さんは何時間も前の食品の香りすらも嗅ぎ取ることができたのです!
さすがは胡桃さんです。きっと彼女の脳内では、食材たちが列に並ぶかのようにその存在を感じ取れるのでしょう。
「いた」
すこしの時間のあと、胡桃さんは呟きました。
「ここで食べてたから助かったな…この匂いの残り香をたどっていこう。向こうだ。」
この時はとっても胡桃さんが頼もしく見えました。
さて、胡桃さんの背中を追ってやってきたのは街灯の明かりが薄っすらと視界を広げる、なんとも寂しくて薄暗い裏路地でした。といっても特別怪しい雰囲気だとか、気味が悪いだとかそういう感じはあんまりしない路地なのでした。
「ここで本当に合ってるのですか?」
「ああ。でもな…ここらで強いタバコの匂いに上書きされててこれ以上はよくわからねぇ。歩きタバコしてるヤツがここを通ったのかな…クソッ!」
いやここまでこれただけですごいと思いますが…
紅葉だけではこの場所はきっとわからなかったでしょう。この辺りになにか育さんの居場所への手がかりがあればいいのですが…
紅葉は周りをキョロキョロ見回しました。そしてその時は直ぐに訪れました。
「!!?!??」
謎の白い腕が壁から何本も生えて、胡桃さんに掴みかかったのです。
それは音もなく起こった一瞬の出来事だった。路地の両脇から現れた半透明で無機質な腕が、胡桃の身体を拘束した。胡桃は身動きが出来ずその場に留まってしまう。
「モガガガガガ…ムンッ…ムグーーーー!」
「胡桃さん!?」
鈍く、青白く光るその腕は何本も現れ、胡桃の身体に巻き付き、闇の中へ引きずり込むかのように張り付いた。
「うおおおお胡桃さんー!!」
「ムグムグーー!!!(腕力ねぇーー!!!)」
紅葉は胡桃にまとわりつく腕を剝がしにつかみかかる。しかし力のない紅葉ではパワーで負けてしまうのであった。
「ゴモ…もみ、モガガガ」
「こ、こうなったら火事場の力に賭けるしかありません」
紅葉は手元からお菓子のブラックサ●ダーを取り出す。
「実は2個貰ってたのを忘れて持ってました…2人で食べるために恋太郎さんがくれたこのブラック●ンダー!さぁ胡桃さん食べたければ幽霊の手を振り払ってここまでくるのです!」
「モガ…っていうか…」
絡みつく腕の隙間から胡桃は何とか顔を出して応える。
「さっきコンビニフードの匂い嗅いでたからそういうのしか今食べたくねぇ…」
「言ってる場合ですか!?」
胡桃の「食」への強いこだわりは死の淵に立たされても健在だった。
「ええいこうなったらブ●ックサンダーフリスビーですとってこーーい」
「ワ”ーーー馬鹿ッお菓子を粗末にするな!!!」
胡桃の食への強いこだわりは死の淵の彼女に火事場の馬鹿力を与えた。
「オラーーーーーーーーッ」
「おおお」
胡桃は幽霊の手をお菓子に飛びかかる勢いだけで振り切り、地面に落ちる前に●ラックサンダーをキャッチした。
「胡桃さん…貴女ならきっとそうすると信じていました」
「言ってる場合か!!
来るぞ」
そこには再び少女達を逃さんとする青白い腕の群れ。
立ちはだかったのはなんと紅葉であった。
ガシィッ!!
青白い腕と貝殻繋ぎで張り合う紅葉。
その身体は震えており立っている足も、握っている手も小刻みに揺れていた。
「も、紅葉…!?何してるんだ!?」
「胡桃さん…紅葉は過去に揉み筋を痛めたことがありましたよね」
「そ、そんなこともあったがそれが何だってんだ」
「そして皆さんや恋太郎さんの協力あって無事に治すことができました…!」
ゾルゾルと近づく腕の数々。しかし紅葉の瞳はアメジスト色の炎を宿していた。
「治し方を知っているということは…
壊し方も知っているということだ!!!
紅葉流マッサージ 裏奥義『絶』!!!!!」
その瞬間、バトル漫画の如く黒い稲妻が路地裏に疾る。
「/.;@[]\/:&%$#”!”#$%&’()!?!?!?!?!?」
無数の幽霊の腕は声にならない声のような音を立てながらボロボロと崩れ去り、
気づけばそこには、まるで最初から何もなかったかのように薄暗い路地とぬるい風が吹いていた。
「す…すげぇ…ほんとに倒しやがった…!」
「今のは紅葉の紅葉流マッサージ 裏奥義『絶』…握った相手の揉み筋を完全に破壊する技です…」
「すげぇ…!すごいよ紅葉!!お前のおかげで助かった!!ありがとうな!!」
興奮のあまり紅葉に抱きつく胡桃。しかし紅葉は肩を震わせていた。
「おっ、おっ、おっ、おっ…」
「なっ、そ、そうだよな。お前が一番怖い思いをしたもんな」
「違います…紅葉が泣いているのはそのような理由ではありません…」
肩で息をする紅葉。大粒の涙を流す恩人に胡桃は戸惑っていた。
「裏奥義『絶』は…紅葉の経験から掴んだ技。習得『してしまった』技なのです…
筋肉を壊す技…紅葉は…紅葉は使いたくありませんでした…!例え相手が、幽霊さんであってもです…!」
胡桃は呼吸も忘れて紅葉の話を聞いた。
そして、そのことに気が付くとゆっくりと息を吸ってーー
「あのさ…たしかにその裏奥義ってのは…物騒だけどよ。
お前がその技を使ってくれたお陰であたしたち助かったんだ。
だから紅葉の手は…
人を『守る』手だ。
『壊す』手じゃない。
だからあんま自分を責めるなよ。」
「…!!」
それ以上、二人は言葉を交わさなかった。
交わさずとも、二人は、
「胡桃ちゃーん!紅葉ちゃーん!」
二人のもとに駆け付けたのは女子野球部のボーイッシュな先輩、須藤育先輩と
「二人とも!?どうしてこんなところにいるんだい!?」
恋太郎先輩であった。そしてその周りには幽霊路地に囚われていたであろう人たちが、なにが起きたのかわからない顔をして立っていた。
どうやらみんな解放されたらしい。
「良かった…育先輩!それに恋太郎先輩も…ん?恋太郎先輩も?なんで?」
「いやぁ、俺も育を探すうちにここに来て、その後の記憶が曖昧なんだよね」
くるもみ探偵団がここに来る少し前、恋太郎は恋太郎で幽霊に挑み、謎の異空間へ放り込まれ育と脱出しようとしていたのは、また別のお話。
「それにしても二人こそどうしたの?すごく疲れてる顔してるけど…キツいことでもあった?」
「それは…紅葉が…」
「なんでもないよ。二人を探して腹をすかしたってわけさ。」
「…そっか。じゃあ胡桃、紅葉ちゃん、育、帰ろっか。」
「うん」
「ああ」
「…はい。みんなで帰るのです」
また一つ秘密が増えてしまったな、と紅葉は珍しく思い耽った。
今度は紅葉と胡桃、二人だけの。
「ほらっ、帰るぞ。紅葉。」
差し出された胡桃の手は
いつもより少し暖かく感じた。
くるもみ探偵団『もみじマンジュウ』
※なんでも許せる方向け
※オリキャラ注意
※微ホラー注意
※誤字脱字・二人称のミス有りの可能性
見つけた人ごめんなさい
※原作185話(先加入前)までの内容を含めます
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ある春の日のこと。お花の蜜大学附属高等学校の屋上は今日も様々な少女たちで賑わっていた。
無邪気に走り回る者や、優雅にお茶を嗜む者、或いはケツバットに勤しむ者など多岐にわたり、各々が自由に、そして慈しむようにその時間を過ごしていた。そんな空間の中には教科書を音読する者もいた。彼女はサイズの合わない大きめの丸メガネをかけ、三つ編みと膝丈スカートの制服姿と典型的な委員長スタイルに身を包み、一生懸命に英語を読み上げていた。
「When the boy opened the door, the man inside was licking sweet manju, paste from his lips…」
伊院知与は丁寧にゆっくりと英語を読み上げる。
くるくるくるくる…
聞こえてきた明らかな異音。それはかすかな小さい音ではあったがそれでもはっきりと知与の耳に届いた。
「まんじゅう!?」
大声のした方に振り返ると、そこにいたのは知与の2つ上の先輩、
ヘッドホンとフードでダウナーな雰囲気を醸し出すクールなロック少女、原賀胡桃であった。
「わわっ!聞いていたんですかぁ!?」
「まんじゅうはどこだーーーッ!!!」
見た目とは裏腹に獰猛な声を上げて訴える胡桃。知与の英文から饅頭を連想してしまった。
「こ、こんな時に恋太郎さんがいてくれたら…!」
彼女らの恋人、愛城恋太郎はいつものごとく先生の手伝いで不在にしていた。
このままでは暴れ回る先輩を抑えられない…!と焦る知与。
その時、
「ヘイ胡桃ガール!アイアムはジャストナウにジャパニーズマンジューがマイハンドにインデーース!!」
独自の言語を話しながらハイテンションで駆け付けたのはお花の蜜高校の国語教師、ナディーであった。
「ヤクグラウンドロリータからもらったジャパニーズマンジュー、ユーにプレゼントデース」
「おいひぃぃ~~~~!」
エメラルド色の瞳を輝かせ、ゆっくりと饅頭を頬張る胡桃。どうやら嵐は去っていったようだ。
「よかったデース」
「ナディー先生…!ありがとうございます。」
「これくらいのこと、サンキューはファッキューデース!」
「ノーサンキューじゃダメだったんですか?」
知与のツッコミをよそに胡桃が饅頭を食べ終わる。
「ごめんな知与…あたしったらまた」
「いいんですよ!お気になさらず」
優しく微笑む知与。いたたまれない気持ちになった胡桃はすかさず話題を変える。
「あ…『まんじゅうこわい』の英訳版読んでたんだな。懐かしいよ。あたしもやった。」
知与が持っていた教科書に目を向ける。
「はい。音読のテストが近いので、練習していたんです。」
「『ホラーマンジュー』ならアイアムもノウデース!ハウスのスタディでインプットしマーした」
はたしてナディー語の使い方はこれで合っているのだろうか?
文法という型が無い、まさにフリーダムな語感である。書いてて不安しかない。
「ドサクサに紛れて作者の感想入れんなよ」
胡桃がツッコむ。
「そう言えば胡桃先輩、最近物騒な噂が流れているのはご存知ですか?」
知与はふと思い出し胡桃に尋ねた。
物騒…?確かにウチの高校にはディープキスを狙う恐ろしい妖怪が住み着いているのを聞いたことがあるが、だとすると最近なんて言い方はしないだろう、と胡桃は考える。
「いや知らん。何かあったのか?」
「上級生たちが気絶している事件が多発しているそうです。場所もバラバラなのに立て続けに3件もあったそうですよ。」
「アイアムもリッスンしたデース…ティーチャートークでは『ノープロブレム』とチェックされましたが…アイアムはリトルホラーデース」
「…職員会議でも話題になったけど『事件性なし』と判断されたんですね。」
「オーイエス!」
知与にナディー語を翻訳するスキルがあって助かったな、と胡桃は安堵の息をついた。
「気になりますね、その事件。」
教室に戻った胡桃はぶっきらぼうに話しかけてくる少女と邂逅する。
といってもその少女とはもちろん、胡桃と同じクラスで隣の机に着席していた生粋の感触フェチ、茂見紅葉であった。
紅葉はお気に入りのONE PIECEのナミのおっ●いマウスパッドに顔の横半分を埋めたままこちらを向いた。
「…なんのだよ」
同じくぶっきらぼうに返す胡桃。立ったまま応えるので座った紅葉を見下す形となり、余計に辛辣な雰囲気を醸し出していた。
「聞いたんですよあなた達の会話を。立て続けに3件、バラバラの場所で人が気絶している所が見つかったんですってね。」
「盗み聞きしやがって。まぁ確かに物騒だよな。こういうのとは無関係な学校だと思っていたけどさ。」
「こういうのとは?」
「いや…ケンカだよケンカ!人が気絶して倒れてるなんてどう考えてもそこでなにかしらのケンカがあったとしか思えねぇ!紅葉もそう思うだろ」
「ふぅん…紅葉の予想は異なります」
眉を寄せる紅葉。胡桃も椅子に座り紅葉と向き合う。
「じゃ、紅葉はどう解釈するんだよ」
「そもそも、3件の事件は不自然なんですよ。バラバラの場所なのに時間帯は全て放課後、しかも17時から18時の間に起こっていました。」
「詳しいな!」
ていうかこいつはそもそもこの事件を追っていたのか?何のために?
疑問が湧いてくる胡桃。続けて紅葉がまくしたてるように話す。
「1人目は3年男子、2人目は2年女子、そして3人目は清掃員のおじさんが標的になったそうです。意図は分かりませんが事件性が無いとは思えません。きっと裏があるはずです。」
「…そりゃ結構なことだけどよ、なんでだよ?」
「はい?」
気の抜けた返事を返す。胡桃は少し声色を強め尋ねた。
「なんでお前が首をつっこもうとしてるんだ?本当に事件だったらどうする。お前が狙われるかもしれないんだぞ」
「そうですね。でも、もし、次の標的が恋太郎さんだったら、紅葉はここで行動しなかったことを死ぬほど後悔すると思います。」
その言葉を聞いてハッとした。胡桃は『最悪』を心の中で想像した。
この学校で起きていることならば、恋太郎先輩と無関係ではないかもしれない…
「…あの超人(ひと)がそう簡単に気を失うとは思えねぇけどな」
強がりで発したその言葉は、昼休み終了のチャイムにかき消されていった。
放課後、紅葉は半ば無理やり胡桃を連れて保健室を訪れた。そこは第1の事件、3年男子が気絶していたとされる犯行現場であった。事件(紅葉が勝手に事件ということにしている)の被害者である3年帰宅部「今殻火得男 (いまからかえるお)」は17時11分頃に鼻血を止めるガーゼを受け取りに保健室へ入った。その後保健室の先生が倒れた彼を発見したのは17時23分だったという。
「ちょうど犯行の時間にナディー先生が保健室の先生を見ているのでアリバイがありますね。犯人は保健室の先生ではないでしょう」
「勝手に調査しやがって…」
不満をたらたらとこぼす胡桃。言いながら紅葉についていくのは昼休みの会話が
胸のどこかで引っかかっているからだと彼女自身も理解していた。
『もし、次の標的が恋太郎さんだったら、紅葉はここで行動しなかったことを死ぬほど後悔すると思います。』
紅葉の言葉が頭の中を巡る。そんな話聞かされたらじっとしてなんかいられないじゃん…!
「次の犯行現場に向かいましょう。2人目は音楽室、3人目は1階の男子トイレでした。なので、ここからは手分けして調査しましょう。紅葉は音楽室に向かいますのでーー」
「行けってか!!あたしに男子トイレに向かえってか!?」
結果として証拠らしい証拠は何も見つからなかった。
男子トイレの方は恋太郎に頼み、隅から隅まで見てもらったが、人が争ったり、何かが起こった形跡のようなものは何もなかったという。
「元々1階の端にあるトイレですからね。誰かが使うイメージがないからこそ、証拠が残されていると思っていたのですが…恋太郎さんが無いというならばきっとなにも無かったのでしょう」
もみもみもみ。
「…なぁ紅葉よ。やっぱりただの偶然で事件なんて無かったんじゃないのか?」
もみもみもみもみ。
二人は一旦自分たちのクラスの教室に戻ってきた。
「それが一番最適で安心な結論なんですがね。でも人が倒れていたのは確かなんですし、その理由を確かにしないとスッキリしませんよ」
もみもみもみもみもみ。
「………だからってあたしの胸でストレス発散しないでくれるかな~~~~~」
もみもみもみもみもみもみもみもみもみ。
紅葉は推理しながら胡桃の胸を揉んでいた。いや、揉みながら推理していたとも言えるし、そうでないとも言えるだろうーー
「今日は調査で歩き回ったので。もみルギー補給しないと頭が回転しないのです。」
「あたしで補給すんな!!理事長サマんとこに行け!!!」
誰もいない放課後の教室に乙女の尊厳を破壊されつつある少女の悲しい怒号が響いた。
後日。灰尾凛の紹介で2人目の被害者の話を聞くことができた。
「わたくしのお友達の詩織輝螺(しおりきあら)さんですわ。みなさん親しみを込めて『オリキャラちゃん』と呼んでいますわ~」
「は、はじめまして…」
「清々しい名前だなオイ」
「おや…?どこかで見たことあると思えば女子バドミントン部の」
「え!わ、私を知ってるんですか…!?」
「お名前は今知ったのです。マッサージさせていただいただけなので。」
「噓…!そんな素敵なことをしてもらったのに覚えていないなんて…!私ったら最低です!」
「いやコイツの場合記憶消えるのはマッサージのせいだから」
「紅葉は揉めればいいのです」
女子中学生4人の会話は続く。
「うう…やっぱり私変なんですよ…あの日のことだって何も思い出せないですし」
「あの日?」
「音楽室で倒れていた日のことですわ」
詩織輝螺、通称オリキャラは忘れ物を、音楽の教科書を取りに放課後に音楽室に訪れていた。そしてそこで「何か」が起こり、気絶してしまったという。
その際、音楽の先生から鍵を借りていたので、それ以前の人の出入は1~2時間は無かったという。
「そもそも部屋に誰かいたら先生が鍵かけねーだろ」
「そのとおりなのです」
「私そそう思ってて…でもそこで何があったのか本当に思い出せないんですよ。」
気まずい沈黙が流れる。これ以上の情報は得られないか…と胡桃があきらめかけたその時、
「『何が』あなたを気絶させたかはわかりませんが、『何故』気絶したかはわかるかもしれません」
紅葉は唐突にそう言った。
「「「え?」」」
驚く三人。すると紅葉はオリキャラの背後に音もなく回り込みーー
「失礼します。あそーれもみもみ」
「ふにゃっっっ!?!?き、気持ちいいいいい~~~~!♡!♡!♡!♡!」
「なっ何やってんだーーーッ!!!」
突然オリキャラの頭を揉みしだく紅葉。オリキャラは感じたことのない快楽の嵐の如き頭皮マッサージを受け、得も言われぬ蕩けた顔を見せた。
「ふむ…瘤(こぶ)のようなものが見つからないということは頭を打った衝撃で記憶を失ったわけではなさそうなのです。おや?この凝りかたはもしや…?」
「はにゃあぁぁぁぁぁ♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡」
「やっ…やめろぉー紅葉ぃーー!なんか人にお見せできないお顔しちゃってる!!オリキャラちゃん気持ち良すぎて白目向きかけてる!!!」
「脳ミソいじくりまわされてる被検体みたいでバイオレンすわ~~~~!!♡♡」
「通常運転だなおめーは!!!」
怒涛の頭皮攻めを終えた紅葉は満足そうであった。
「わかりましたよ。オリキャラさんは驚いた衝撃で気を失ったのです。それも恐怖を対象としたものです。」
「なんだって?おどかされただけだったってのか…?」
「はい。頭に外傷のようなものがありませんでしたし、何より、つむじから右斜めに親指幅4本分離れた場所に存在する『感情のツボ』がやや左に凝り固まっていました。これは恐怖によるショックから心を守るための凝りかたです。」
「何それ!?」
※このツボはフィクションです
「おそらく心が壊れかけるほどの『恐怖』と『衝撃』だったのでしょう。心を守るために気を失ったのでしょうね。」
「なるほど…自衛のセキュリティが発動したってことなのか…!?」
なるほど、と口に出した割には紅葉の言うことを鵜吞みにしていいものか、と胡桃は眉をひそめる。
「お…思いらしました…♡♡」
「オリキャラさん!」
「マジか!?何があったかわかるか!?」
「蛇です…大人よりも大きな…巨大な蛇が音楽室に…!!」
「ハァ?」
「それはそれは」
「ミステリアすわ~~~~!!」
調査の結論から言うと3人とも恐怖による衝撃で気を失ったことが発覚した。
1人目の今殻火得男は教頭先生を、2人目の詩織輝螺は巨大な蛇を、3人目の綺令杉芳造
(きれいすぎ よしぞう)は死んだ父を見て気絶したということだった。
オリキャラから話を聞いてからさらに数日経ち、くるもみは屋上に座っていた。
「謎い」
胡桃が気だるげに呟く。その瞳の下にはクマができており寝不足であることを表していた。
「なんですかそれ」
「造語だ 忘れろ」
「しかし困ったのです~~本来中学校の校舎には来ることのない教頭先生が保健室に現れたり、巨大な蛇が出現したり、果てには死んだ人まで蘇ってしまったのです~~」
紅葉は唇を尖らせる。
「聞けば聞くほど何が起きていたのか分かりません~~こんなのまるで…」
「メルヘンですか?」
そこに現れたのは若き絵本作家にして世界に絶望した少女、雪房田夢留先輩だった。
「いるはずの無い人、存在するはずのない生物など、まるでメルヘンです」
「いや…夢留先輩、あたしたちのしてる話ってそんな感じじゃ」
「メル先輩って語感がメルヘンみたいですね。今度からメルヘン輩とお呼びしても?」
「構いませんが…」
「今かんけーあるかそれ!?」
夢留は腰を下ろし二人の隣に座る。
「まね妖怪ボガートを知っていますか?」
「紅葉は知らないのです」
「ハリポタに出てくるあれだろ、対象の恐ろしいものに化けて驚かせる魔法生物…」
「はい。3人とも恐怖によって気絶していたということは、彼らにとって『見たもの』はそれだけ恐ろしいと感じるものだったのではないでしょうか?」
その時胡桃に電流疾走る。一呼吸置き、胡桃はゆっくりと口を開く。
「アンタッ…まさか今回の事件はそいつが犯人だっていうんじゃねーだろうな!!!あんなのそれこそメルヘンだろ!!存在しないだろ!!!常識的に考えて!!!」
夢留は顔をピクリとも動かさず、吸い込まれそうな程に黒く染まった瞳で胡桃を見つめて答えた。
「ですが現状、存在するはずのない存在が脅かしているのでしょう?それに…」
「「それに…?」」
「常識なら原作130話で恋太郎さんと一緒に爆散したと聞きましたが。」
「いやアニメ化決定で屋上から飛んだけども!!!!!」
その日の夕方、紅葉は1人で事件性のありそうな部屋を見て回っていた。
(存在するはずのない存在、ですか…)
これまでに事件は全て、誰もいない閉ざされた空間で起きていた。よってもし次があるならば同じ構造の部屋で起きるだろうと踏んでいた。紅葉は家庭科室を訪れていた。
(まね妖怪…もし本当にそんな存在がいるのだとしたら)
それは理から外れたモノ。この世に存在してはならぬ御伽話のはぐれ者。
(ぜひ揉ませて欲しいのです…!!)
シリアスやことは気にせず紅葉はいつも通りだった。
むにゅん。
その時、ふと手に柔らかな感触が触れる。家庭科室にあるものとは思えぬゴム毬のような感触。違和感を感じた紅葉がその手を見ると
手が
無かった
「『ヨセモノ』の伝説をご存知ですか?」
夢留は胡桃におとぎ話を娘に読み聞かせる母親のような優しい口調で語る。
「し…知らない」
「日本に伝わる妖怪の類いです。まぁ、そのルーツは海外からやってきたそうですが…『ヨセモノ』ではなく元は『ヨソモノ』と呼ばれていたそうです」
夢留は淡々と語る。
「故に、こちらの人々と仲良くなりたかったのか…ヨセモノは自らの姿を化ける力を手にしました。しかし、 ヨセモノが化けるものは人々が怖がるものばかり。彼らはヨセモノを忌み嫌いました。」
その瞳には彼女の悲しみと絶望を写していた。
「『余所者』から『寄せる者』となった『それ』は、自身を受け入れなかった人々を憎み、人を襲うようになったと言われています。」
「それって…」
「はい。まね妖怪ボガートに酷似しているとは思いませんか?そうそう、ヨセモノは化けるだけでなく、人を化かす力も得ているとか」
「あ…あたしやっぱり紅葉のこと探してくるよっ!」
胡桃は急いで屋上を飛び出た。その顔には不安と焦りが滲みでていた。
「おやおや…?まさか、本当に…?」
「なぁっんじゃこりぁあああああああああああああああ!!!!!!!!!」
家庭科室に絶望の叫びが響く。 茂見紅葉は自らの手元を見て驚愕した。手が無いのである。いや、正しくは手のある部分がゴムまりのようになってしまい、指という指が存在していなかった。
「野比のび太みたいな名前ですがドラえもんみたいな手になるのは嫌ですぅ!!!!」
自身の手の構造が誰もがご存知の国民的なフォルムに変化した状況に、理解が追いついていなかった。
「このままでは紅葉は…もう…誰も…揉めないのですか…!?」
恐怖。揉めないという恐怖。指の感覚が消える恐怖。
それは己のアイデンティティ。己の存在価値。
人を幸せにする手段。そして、彼女の誇りそのもの。
それらが一瞬で泡のように消え、紅葉の額には夥しい脂汗が滲んでいた。
「うっうおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお」
完全なパニックに陥っていたその時、聞き覚えのある声が聞こえる。
「紅葉ちゃん」
彼の声。
私のためにいつもアトムってくれる、最愛の彼の声が
「紅葉ちゃン、もウマッサあジできないンだねェ」
「…ッッ!?」
それは恋太郎さんの姿をした『何か』。恋太郎さんではない『何か』。
「ま、まだ紅葉はマッサージできるのです、おでこあんまも使えるのです」
「そンなのじゃァ満zoクでキ無いな」
「そうソウ」
「残ネン残ネン」
気づくと辺りは今までにマッサージした運動部のみなさんと恋太郎さんに囲まれていた。
「あ…あ…嫌ッ、いやなのです」
「「嫌なのワこっチィィィィィィィ」」
「「「あーあ、残ネン残ネン。」」」
取り囲む怨嗟の声。紅葉はその渦の真ん中で耳を塞ぐことしかできなかった。
しかし、丸い手がそれをうまくさせてくれない。
紅葉は隙間から入りくる恨み節にただただ恐怖するしかなかった。
「あ、ああ…」
「「「「「ジャア、オ前ハモウイラナイ子ダナ。」」」」」
「あ”」
「紅葉ぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃっ!!!!!」
バァン!と開け放たれる扉。絶叫を聞きつけた胡桃が鬼の形相で駆け込んできた。
「なにしてんだよてめぇら!!あたしの友達をはなしやがれ!!」
「く、るみさん…」
倒れこむ紅葉を抱きかかえる胡桃。その時、周りの人は消え、最初に現れた恋太郎もどきだけになっていた。しかし、その『何か』は激しいノイズを鳴らし、自らの形を保てないでいた。
「なんだあれ…恋太郎先輩じゃない、よな?」
「あの人ならああなりかねませんが、今回は違うようです」
「ほ…ほんとにヨセモノだってのかよ…」
しかし胡桃が来てから様子がおかしいことに気づく。
「しかし何です?胡桃さんが来てくれてから、あれの様子が…」
「ああ。きっとあたしたちが2人いることでどちらの『恐怖の対象』に化ければいいのかわかんなくなってんだよ。」
「オ”、オ”、オ”、オ”、オ”、オ”、ヴァヴァ、ヴァ、ヴァ」
身の毛もよだつような不快なノイズ。しかしそれは形を崩しながらもその場にとどまっている。
「今だよ紅葉逃げるよッ!」
「いやなのです!」
「ハァ!?」
紅葉の手を掴む胡桃。胡桃の袖を握る紅葉。
「こ、ここで逃げたらヤツはまたどこかで事件を起こすのです!そうなる前に…!今ここで捕まえるのです!」
「ふざけんじゃねぇ!お前今自分がなにされたのかわかってんのか!?」
袖を握る紅葉は震えていた。その様子と対照的に紅葉の瞳は力強い光に満ちていた。
「紅葉に作戦があるのです。ヤツは『恐怖の対象』に化けるのですよね?」
「ああ。夢留先輩の予想通りならそうなる。」
「では二人が『同じもの』を恐れていたら…ヤツの形は安定するのではないでしょうか?」
「そうかもしれねーけど…だ、だからって」
「胡桃さん、『What are you scared of?』
(あなたは何がこわい?)」
「ッ…!!」
胡桃にその日二度目の電流疾走る。その台詞は2年前の今頃に散々練習したフレーズ。一呼吸置き、胡桃はゆっくりと口を開く。
そして二人は丁寧に息を合わせて英語を読み上げた。
「「I'm scared of sweet manju!!!」
(あま〜いまんじゅうがこわい!!!)」
そう宣言すると、それはボンッ!と音を立てひとつの饅頭となり床に落ちた。
「はぁ…!」
「なんとかうまくいきましたね。沈静化成功なのです」
紅葉は饅頭となったそれを拾い上げる。
「お、おい…あんまさわんなよ…」
「ご安心を。3秒ルールなのです。」
胡桃にその日三度目の電流…ではなく大声が出る。
「お前食うのか!?それを!?饅頭とはいえ元はバケモンなんだぞ!!!!!」
「ですがこれ以外に対処法が思いつかないのです」
「やっ…やめろぉーーーー!!!!!」
くるくるくるくる…
聞こえてきた明らかな異音。それはかすかな小さい音ではあったがそれでもはっきりとーーー
「で、二人ではんぶんこして食べたと?」
雪房田夢留先輩は二人の話を屋上で興味深々に聞いていた。
「だってよ…お、美味しそうに見えたから…」
「何ともお二人らしい、実にメルヘンな解決方法です」
先輩はまっすぐにこちらを見つめて応える。多分嫌味とかじゃなく本心でそう思ってんだろうなぁ…と胡桃は複雑な気持ちになる。
「あれから身体に問題はないよ。楠莉に看て貰ったけど二人とも異常なしだって。…まぁあの人は医者じゃないけどさ。羽々里には黙っててくれよ?金持ちパワーでどんな治療施設に連れていかれるかわかんねぇから…」
「ふふっ、了解いたしました。」
そう、これは乙女の秘密。こんな無茶したこと、恋太郎先輩が知ったら心配してくれるかな、それとも怒ってくれるかな。
でもごめん。これだけはあたしと紅葉と…その他数人だけの秘密にしておきたいんだ。
「それと…すみませんでした。」
夢留先輩が深々と頭を下げる。
「は!?な、なに、なんで?」
「私が冗談交じりにヨセモノの話をしてしまったが故にお二人に余計な恐怖を与えてしまったと思い、申し訳なくて」
あんな話をした以上、自分も当事者になったのに、何もしてやれなかった、と先輩は謝った。
「や、やめてよ!夢留先輩のおかげで助かったようなもんだし!」
「謝られるとこっちも申し訳なくなるのです」
もみもみ。
「ですが…そうだとしても謝らせて下さい。」
夢留先輩は頭を上げると微笑みながら優しい声色で話始めた。
「それと…ついでに私の見解を申しても?」
「な、なんだよ…」
「きっとヨセモノは幸せに逝ったのではないでしょうか。だって、胡桃さんは美味しそうに食事をする方ですもの。ヨセモノは胡桃さんに愛されて逝ったのだと思いますよ。」
理解されたかった。そのための力だった。
しかしそれは人に忌み嫌われる力だった。
そんな化け物が最期に一人の少女に愛された。
(おいひぃぃ~~~~!)
「そ、そんなの…先輩が優しいからそんな風に感じるんだよっ。後から何とでも言えるじゃないか。」
「その通りですが、今あなたがたに異変が起きないことが証拠だと思いますね。そんな人智を超える存在が恨んで食べられたのなら、お二人は今頃どうなっていたことやら」
「こ、こえーこと言うなよぉ…」
「ふふふ、メルヘンですね」
「なのです」
もみもみもみ。
「それにしても、あの時胡桃さんが来てくれなければ私も危なかったです。本当にありがとうございました。」
もみもみもみもみもみもみ。
「だっ・かっ・らっ・さぁ〜〜〜〜〜〜〜〜」
もみもみもみもみもみもみもみもみもみもみ。
「本気で感謝してるならあたしの胸を揉むんじゃねえ〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!!!!」
ファミリーのみんなで満ちた放課後の屋上に乙女の尊厳を破壊されつつある少女の叫びが空へ響いた。
※この物語はフィクションであり、実在の人物 団体 事件とは一切関係ありません。
※もし類似した怪異が存在していた場合、著者は一切の責任を負いません。